ZX−10 メンテナンス?日記 2005年9月17日  フロントフォークのシール&オイル交換

素性不明のフォークなので...
 このZX-10の足を変更する上で倒立にした理由は単純に見た目が宜しいという不純なものでした(笑)。
カウルからチラっと見えるフォークが倒立フォークというのが私のフルカウルバイクの理想の姿(あくまで見た目だけを考えれば)で、カウル無しバイクなら絶対に正立なんです。

まぁこれは性能を考えない上での好みであって、このZX-10も足周り変更に際して色々考えたのですが、やはり見た目で倒立を選びました(笑)。
ツーリングを主な目的に考えていたので倒立化によって乗り心地は勿論、ハンドル切れ角の減少などネガティブな面も予想されましたが、それらは決してどうにもならないレベルでは無いだろうという予想のもと倒立化を決行しました。

装着したのは車格的にも性格的にも近いと思われる9RB用倒立フロントフォークです。
ネットオークションで中古購入のためどの程度使われた物か定かではありませんでした。
当然安心のためにはオーバーホールが必要だったのですが時間的制約もあって何もせずそのまま装着しておりました。

案の定装着後、早速サーキットに峠に(本来目的のツーリングが皆無なんですが...(汗))と走りまくった結果シールよりオイルが若干滲んできました。
その後時間的余裕も出来たのでフォークシールの交換とそれに伴ってフォークオイル交換、スライドメタル類の交換を行い、さらに(笑)フォークアウターチューブのアルマイト加工を行いました(これは機能的には全く変化ないのでオマケですが)。

今まで正立フォークしか触った事がありませんでしたので、独特な構造の倒立フォークには少々梃子摺りました。




画像をクリックすると拡大画像が現れます

 

最近この姿が多いです...

 足周り製作のために購入したフロント&リヤスタンドが今回も活躍です。

フロントホイールを外しでフォークを抜き取ります。

 

分解

 フォークの分解には本来はインナーチューブの回り止めのためのSST(特殊工具)が必要なのですが、一々買う訳にも行きませんのでエアインパクトで緩める事で代用しています。
この方法は正規では無いのでお勧めは出来ませんが、過去この方法で何本もバラして組んでますので一応実績はあります(笑)。

アウターチューブのダストシールを細いマイナスドライバーで注意深く外し、クリップを外します。
そこからはコンコンと引き出せばこのようにバラせます。

ご覧のようにZX-9RBの純正フォークは等ピッチのスプリングに長いスペーサーが組み合わされていました。

 

インナーチューブ構造

 パーツリストではこのような呼称となっています。

FORK PISTONがアウターチューブの内面をスライド、OUTER BUSHはアウターチューブの下端に勘合されてインナーチューブをスライドします。
その下にワッシャーとフォークシールが組み込まれています。

目視ではこれらメタルの消耗もそれ程確認出来ないのですが、今回は全て新品に交換します。

 

 

カートリッジ上部

 正立と違うのがスプリングがダンパーバルブユニットと更にはキャップと結合されているという事です。

シールやメタルの交換のみを考えればここはバラさずに済むのですがフォークオイルの油面調整では外す必要があるのです。

 

参考にZX-7Rの倒立フォークと比較

 画像左は同時に作業を行った同僚のZX-7Rのフォークです。

フォーク長が大きく違う他、スプリングはバリアブル(不等)ピッチとなっており、初期の動きが良さそうです。
またインナーチューブ径も9RBのφ41に対してφ43と太くなっており、そのためアウターチューブも9RBよりもボトム部分が太くなっています。

 

分解大会?

 同じZXシリーズではありますが、性格の全く異なる2台です。

 

組み立て作業

 旧いパーツを外したら新品パーツを装着するのですが、まずはダストシールからです。
マニュアルに記載されていますが、シールの挿入には画像のようにフォークにビニールを被せた上、オイルで潤滑させて挿入します。

これはメタルが嵌め込まれる溝によってシールが傷付けられないようにです。
破れ難くく、尚且つ極力薄いビニールが良いと思います。

 

装着完了

 挿入する順番は

・ダストシール
・フォークシール
・ワッシャー
・アウターブッシュ
・ピストン

となります。
最終的にはダストシールとフォークシールの間にクリップが入りますがこれは後でも大丈夫です。

 

自作特殊工具その1

 カートリッジを分解するのに必要な特殊工具(という程大そうな物ではありませんが)の内の1つです。

キャップの下にロッドを固定するためのナットが隠れているのですが、これを緩めたり締めたりする際にスプリングを下げておく物です。
単にアルミ板に10mmの穴を開けてU字状に開口させた物です。

 

自作特殊工具その2

 これはダンパーロッドを上下させてエア抜きを行う際に必要な物です。
単純に10mm×1.0の雌ネジを切った棒です。

ダンパーロッドがフォークの奥に沈むのでこれで一時的に延長して手で持てるようにするだけの物です。
ダンパーロッドを動かす事が出来ればどんな構造でもOKです。

 

自作特殊工具その3

 これは油面ゲージです。

簡単に言えばストローですね(笑)。
アウターチューブからの規定寸法に油面を調整するための物で、端材のアルミブロックにステンレスパイプが通るようにして、そのパイプをネジで留められるようにした物です。

同様な作用をすれば木だろうが何であろうがOKでしょう。

 

これは市販品の特殊工具

 フォークシールを圧入するためのシールプッシャーです。

要はスライデングハンマーで半割りのプッシャー(内部にテフロン樹脂が貼ってありフォークを傷付けるのを防止している)で3本爪のリングを介してシールを叩き入れるのです。

正立〜倒立まで幅広く使えるので買って損は無いと思います。
私が購入したのは安売り工具店のオリジナル品で、内部のテフロンが良く剥がれてしまうのでその都度接着して使ってます...

 

油面調整

 前述の油面ゲージはこのようにして使用します。

ダンパーユニットを組み込み、スプリングは無い状態でアウターチューブをフルボトムさせ、その上端から規定寸法までフォークオイルが満たされるようにするのですが、一度オイルを大目に入れてからダンパーロッドを何回も(マニュアルでは10回)上下させて内部のエアを抜きます。

その後規定寸法までオイルを抜き取るのです。

私はマイティバッグ(ブレーキのエア抜き真空発生器)を使っていますが、注射器等でも大丈夫です。
市販品は注射器のようです。

 

完成

 アウターチューブは9RB純正の金色から黒にしてみました。
かなり地味になった気がします。

画像に見える金色のボルトも銀に替えたいのですが、なかなか銀のアルミボルトが売ってません...

 

完成その2

 カウルがあるためアウターチューブは殆ど見えないのですが、その僅かに見えるフォークアウターをブラックアウトした事で倒立と分かり難くなって満足です(笑)。

このバイクはさり気無い改造がコンセプトですから!

 

 

 

修理を終えて

 組み込みが完了したらスプリングイニシャル、コンプレッション、リバウンド、これらの調整を全て「最弱」にして静かに走り慣らしを行いました。

メタルとシールの馴染みを出すためで、数百km走行の後、フォークオイルを再度交換してようやく本来のセッティングを行いました。
これで晴れて前後とも本来の性能を発揮する状態になった訳です。  

機能部分に加えて外観も修正した訳ですが、新品のフォークオイルと新品のスライドメタルは効果絶大で、非常にスムーズに動くようになりました。
初期の動きが向上しましたが、沈み込んだ時の踏ん張りも良く更に走り易くなりました。
今後は時期を見て磨耗しているインナーチューブの交換&コーティングを行い、更なる性能向上を行いたいところです。

その後レイン路面のサーキットを走り込みましたが前後のバランスも良好でタイヤが突然グリップを失う事も無く、安心して走れる事を確認。
これはケーシングが柔らかいミシュランタイヤのお陰もあると思いますが、見た目重視で作った足も思いの他良く出来たと思います(笑)。

 

 

 

 

※チューニング、修理等についての内容、理論等についてはこの記載事項が全て正しいというものではありません。色々な情報、資料、経験を元に私が個人的に判断したもので、私のクルマに有益なチューニングであっても全てのクルマにおいて通 用するとは限りませんのでご注意下さい。また、当ホームページ記事を参考にした事によって生じた事故、損害、死傷等は掲載者であるETgarageは補償いたしかねますので個人の責任、判断においての作業をお願い申し上げます。
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