KSR-110 メンテナンス?日記 2008年2月18日  マニュアルクラッチ化!


一長一短
 さて、このKSRですが、ノーマルは遠心クラッチのボトムニュートラル4速という構造です。
KSR110の前身であるKSRT&Uではマニュアルリターン式6速でしたから、新しくなって操作は圧倒的に「イージー」になった訳です。
オートマ免許でも乗れるという事で、ターゲットをより広くしたかったのかもしれませんね〜

遠心クラッチはスーパーカブのイメージで乗れば問題無いのですが、ボトムニュートラルが曲者!!(カブはロータリー式)
停止間際に意図せずついニュートラルに入れてしまったり、不意のエンストで慌ててニュートラル探すのに手間取ったり(笑)
それでも走りこんで殆ど違和感無く乗れるようにはなっていました。
遠心クラッチものんびり走るには絶妙で、コレはコレで有りかな?とも思えます。

しかし私の目的はあくまでもサーキットで遊べるバイクですから、マニュアルクラッチ化は当初より想定していました。
社外パーツで簡単?にマニュアル化出来るのですが、ワイヤー式、油圧式とラインナップがあるのです。
車格から言ってワイヤー式が重量面でも好ましいと思います。
しかし、社外品の「クラッチワイヤー」というのが気になったのです。

例えば出先で切れてしまっても社外専用パーツ(何かしら流用出来るとは思いますが)故に即時の部品調達はほぼ不可能です。
これが油圧式なら汎用パーツで賄えるため、安心だと思ったのです。
勿論、専用であるレリーズシリンダーが壊れたりしたらどうにもなりませんが、確率的には低いと思われますので...

という訳で武川製の油圧式を選択しました。
さらにプライマリーハウジングを撤去するためのプライマリーギア付きの物としました。
このプライマリーハウジング(+プライマリークラッチ)はかなりの重量でフライホイール効果があるものです。
このお陰でエンストし難く、まったりとした乗り味も生んでいるのですが、キビキビ走るには不要です。

武川製マニュアル化キットには説明書が付属しますが思いの外あっさり(笑)ですので実際の作業を敢えて掲載してみました。
他にも色々な作業方法や工夫はあると思いますので、あくまで作業の一例として参考にして頂ければと思います。

 

オイルも無駄にしないように

 クラッチ周りをバラすので当然エンジンオイルは抜けてしまいます。
新車慣らし走行開始から2回目のオイル交換時(1,000km)に合わせてフィルター交換と一緒に作業しました。

しかしエンジンオイルが1Lっていうのはリーズナブルですよね〜!!
迷わずMOTUL 300V入れました(笑)

 

ま、新車だから...(汗)

 クラッチ(車体進行方向右)側のカバーを外します。
これはインパクト(=ショック)ドライバーを使用した方が良いと思います。

で、カバーを外すとオイルストレーナーが出てきます。

盛大に獲物が網に...(汗)
糸くずのようなもの、さらには金属片その他色々...

まぁ新車ですのでミッションの当りも出る過程のものですので異常ではありませんが、この時期に開けて良かったかも...

全体に緑がかっているのはオイルの色です。
500km使用では変色も殆ど無い緑色のままです→カワサキっぽくてお気に入り(笑)

 

見慣れない構造

 プライマリークラッチは「遠心クラッチ」です。
これのハウジングとクラッチシューが重いんです。

クランクシャフトにワンウェイベアリングを介して付いてますので実質フライホイールと言って良いでしょう。

セカンダリーは通常の湿式多板クラッチで、レリーズカムはシフトレバーによって動かされます。

 

セカンダリークラッチ周りの構造

 画面中央下のシフトシャフトがレリーズカムを動かし、それによってレリーズボールが回転、波状のプレートによってクラッチホルダーが押され、シフト操作時にセカンダリクラッチが切れる仕組みです。

このレリーズボールの動きの代わりを油圧シリンダーで行う事になります。


クラッチ機構を外します

 分解に入ります!

レリーズレバー、レリーズカム、レリーズボールの3点を抜き出します。

嵌っているだけですので簡単に外れるはずです。




コイツを外さないとナットにアクセスできません
 次にベアリングを手で抜き出し更にベアリングホルダを抜き出します。
このベアリングホルダも嵌っているだけなのですが、かなりタイト(精度が良い?(笑))なので抜け難いかもしれません。

並行に徐々に抜いていきましょう。
どうしても抜けない場合はベアリングホルダの周囲にある4本のクラッチホルダボルトを外してホルダを一旦抜き出せば抜き易いです。

驚くのはボルトが4本=クラッチスプリングが4本しか入っていないという事です!
6本入る構造ですから純正をあと2本追加すれば純正プチ強化にはなりますね〜

そういう余地も残しているところにカワサキの心意気を感じたりして...(笑)
ま、単にコストダウンの結果だと思いますが...


一旦取り外した部品
 これが外した各部品です。

この内、上2つのベアリングホルダとベアリングはマニュアルクラッチでも使用しますのでご注意を!


プライマリクラッチの取り外し作業
 次にプライマリクラッチを外します。
中心にある19mm頭のナットを緩めるのですが、それには19mmのディープソケットと「基本的」には画像の専用工具が必要です。

しかしエアインパクトレンチもしくは電動インパクトレンチがあればこの特殊工具が無くても大丈夫です。


遠心クラッチが外れます
 プライマリークラッチが外れました。
ハウジング中心にはワンウェイベアリングを見る事ができます。


セカンダリの作業
 今度はセカンダリです。

同じく19mmディープソケットと画像の特殊工具が必要ですが、ここも同様にエアインパクトで代用可能です。

しかしセカンダリに関しては再組立にクラッチハブを押さえたいため、この特殊工具はあった方が良いと思います。

下の工程をご覧頂ければわかると思います。



取り外したプライマリ&セカンダリクラッチ
 プライマリ、セカンダリ両方のナットが外れたところで、このプライマリとセカンダリを「一緒に」抜き出します。

一緒にでないと抜けないので注意が必要です。



スプリング交換のために
 次にシフトシャフトも抜くのですが、この時はシフトドラムに噛んでいるレバーを赤矢印の方向に動かしてドラムから抜きながらシャフトを引っ張り出します。



純正と武川製スプリングの比較
 そのシャフトのリターンスプリングです。

純正に比べ武川製はかなり太く(=テンションが大きく)なっています。

ノーマルの遠心だと結構な割合でギア抜けが発生していましたが、このリターンスプリングも影響あるのか??

このスプリングを先程のシフトシャフトに装着します。
表裏あるので注意が必要です(見れば分かると思いますが)

純正を外す前にじっくり観察しておきましょう。



プライマリギヤの移殖作業
 次にノーマルのプライマリクラッチハウジングに付いている薄いギヤを武川製プライマリギヤ移殖しなければなりません(純正プライマリを生かす場合は作業不要)。

このギヤはセカンダリと噛み合い時はスプリングのテンションでバックラッシュ(ギア歯の遊び)を消す作用をしているようです。

恐らく騒音対策で、スパーギヤ(直線状のギヤ)は噛み合いノイズが出るため、その打ち消し用だと思います。

動力伝達の役目は無いので外してしまって敢えてギヤ音を出して「レーシー」に、というのも有りかもしれません。

で、コイツを外すのが結構厄介で、ホルダはシャフトに軽く圧入されています。
ホルダに引っ掛ける部分が無いためにギヤを利用してホルダを押し出すようにして外す事になると思います(ホルダにツールをかけると変形しそう)。

私はマイナスドライバーを軽く叩き込みながら徐々に外しました。

ここで無理にコジったりすると硬いギヤ歯は簡単に欠けてしまいますので、ギヤの歯部分には力を加えないように慎重に!

ホルダとスプリングを外すとスナップリングがあるのでこれを抜くとギヤが取り出せます。



移殖完了
 外したギヤ、スプリング、ホルダの3点を武川製プライマリギヤに移殖します。

プライマリギヤのギヤ歯と大まかに位置を合わせてホルダをプラハンで軽く叩いてやればOKです。

余裕があればこの移植部品は新品を準備すればノーマルプライマリも使用可能のまま残りますので良いかもしれません。

画像右がノーマルのプライマリ、左が武川製プライマリですが、これを見ても如何に重い回転物が無くなるかが分かると思います。



こんな感じです
 こんな感じになります。

画像上のギヤが移植したギヤで、これはシャフトには固定されず、巻きバネによってテンションを持ってある程度自由に回転する構造です。
簡単に言えばゼンマイみたいな感じ。

この時、フリーな状態で上下のギヤ歯を一緒にどこの歯でも良いのでマジック等でマーキングします。
位置関係をマーキングする訳です。



組み込み作業

 そのプライマリギヤをセカンダリクラッチ(クラッチバスケット)と組み合わせて元に戻すのですが、この時スプリングでテンションを与えられたフリーの薄い方のギヤ歯を歯2枚分ずらして噛み合わせます。

つまり薄い方のギヤはバネの力でギヤの遊び分戻ろうとする状態になるのです。
これによりギヤ音を低減しているのでしょう。

ここで先のマーキングが意味を成します(2歯ずらしたのを確認する)。

プライマリの分解時はSSTを使用しましたが武川製プライマリギヤ装着の場合は画像の様にスパナ、アジャスタブルレンチ(モンキー)があればOKです!

ただしトルクレンチは必要です(締め付けトルク=4.3kg/cm)。



ほぼ完成
 セカンダリはクラッチハブを押さえてシャフトのナットを絞め込まなければなりません。
緩めるのはインパクトレンチで代用出来ますが、絞め込みはインパクトで締められない事もありませんが、好ましくはありませんのでSSTは有った方が良いでしょう。

シャフトのナットを絞め込んだらボールベアリングホルダとベアリングを元の状態に装着します。



完成!
 あとはケースに武川キット付属の油圧シリンダーを取り付け、元通りにケースを取り付ければOK。

勿論ガスケット合わせ面はきっちり脱脂しましょう。

作業のついでにモンキー用のブリーザーキャップを付けてみました。
オイルキャッチタンクがまだ未入手なので付けてみてすぐ外しましたけど...

アルマイトブルーは個人的には好きじゃないので黒くしたいところです。



走行試験!

 これで一般的なクラッチによる4速(ただしボトムニュートラルは変わらず)になった訳ですが、重たいプライマリクラッチ一式が無くなった事により、エンジンレスポンスが格段に向上しました。
レスポンスが良過ぎてカラ吹かしするとそのままエンジンストールする事も(笑)。
これはアイドル回転数を若干上げて1,500〜1,600rpmにしてやったら回避出来ました。

乗るステージやライダーの技量によってはノーマルのプライマリを残したり、もしくはノーマルを加工して軽量化したりして敢えてフライホイール効果を残すと「乗り易さ」はスポイルされなくて良いかもしれません。

「レスポンス向上」はその事自体は速さに「直接的」には結びつきませんが、それでも前回マフラー交換で行ったテストを行うと更にタイムは向上!
もっともこれは発進が遠心クラッチからマニュアルになった事で乗り手がコントロール出来る余地が出来て、パワーバンドを上手く使っての発進が可能になった結果のタイム向上です。
決して「パワーアップ」した訳ではありません。

しかしながら自然なシフト感覚でやはりマニュアル化が正解だと思います。
遠心クラッチの時は結構な割合で発生していたギヤ抜けも殆ど起きなくなり、走るのがより楽しくなりました!
シフトダウンもスムーズに行えるようになり、小排気量車で有効なコーナーでの「半クラ」も可能になったので誤魔化しも効くように(笑)

こうなると6速クロスミッションも早く欲しくなりますね〜

(続く)

 

 

 

 

※チューニング、修理等についての内容、理論等についてはこの記載事項が全て正しいというものではありません。色々な情報、資料、経験を元に私が個人的に判断したもので、私のクルマに有益なチューニングであっても全てのクルマにおいて通 用するとは限りませんのでご注意下さい。また、当ホームページ記事を参考にした事によって生じた事故、損害、死傷等は掲載者であるETgarageは補償いたしかねますので個人の責任、判断においての作業をお願い申し上げます。
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